生態系生態学ゼミとは

このゼミは、発表担当者が興味を持った生態系生態学に関する最新で重要な論文を紹介するものです。

2017年度生態系生態学ゼミで取り扱った論文紹介

2018-1-24
第22回 Agus Jati
論文タイトル:
Creation of forest edge has a global impact on forest vertebrates
Rfeifer et al. (2017)
Nature
Forest fragmentation happened all over the world’s forest and expanded the forest edges. Forest edges have affected 85% of forest vertebrate species. The abundances of 11% birds, 30% reptiles, 41% amphibians and 57% mammals are forest specialist and showed strong declines towards forest edges. Forest specialist is the most sensitive group of vertebrates to forest edges. Many of forest specialists are also categorized as threatened by extinction. Because of this high sensitivity of specialist species, the optimal forest habitat can be much smaller than the actual forest size for high-edge sensitive species. Understanding the response of wildlife to the edge effect is critical for effective conservation action.

2018-1-10
第21回 向井真那
論文タイトル:
How functional is a trait? Phosphorus mobilization through root exudates differs little between Carex species with and without specialized dauciform roots
Gusewell and Schroth (2017)
New Phytologist
根は土壌から栄養塩を獲得するために、様々な形態をとる。本研究ではブラシ状の長い根毛からなり、膨らんだ側根をもつ、dauciform roots(以下DR)に着目した。DRをつくる種とつくらない種をもつEuropean Carexを用いて栽培実験を行っている。それぞれをポット内で育て、土壌のホスファターゼ活性や細根からのカルボン酸分泌速度、植物が獲得するリンの形態を調べ、それらがDRの有無によって違いが見られるかどうかを検証した。本研究ではDRの有無が植物のリン獲得戦略に効いていることは示されなかった。さらに、DRの有無は生理学的機能には違いがあるものの、野外の栄養環境のニッチ分割とは関係が見られなかった。本研究は体系的に実験を行っており、実験を進めていく上で参考になる点が多くある。多くのコストをかけてまで生産するDRの意義とはいったい何であるのか、考えさせられると同時に、今後は異なる視点からの検証が期待される。

2017-12-20
第20回 中野正隆
論文タイトル:
Earthworms can increase mobility and bioavailability of silicon in soil.
Bityutskii et al. (2016)
Soil Biology and Biochemistry
ミミズの糞塊生成は様々な栄養元素の可給性を上げ、作物などの地上部バイオマス増加に貢献していることはこれまでの研究で明らかになっている。本研究は近年植物の栄養元素として研究が進んでいるケイ素に注目し、植物のケイ素獲得におけるミミズの重要性を初めて明らかにした論文である。様々な土壌環境下でミミズの有無によるポット実験を行い、土壌ケイ素、オルトケイ酸の濃度の違いを検証した。また、ケイ素集積植物であるキュウリとトウモロコシをポットで育成し、xylem sap methodを用いて実際にオルトケイ酸がどれほど吸収されたかを検証した。
両実験の結果、ミミズの活動が土壌のオルトケイ酸濃度を増加させ、植物の吸収速度も増加させていることが明らかになった。また、ケイ素可給性の低い土壌ではミミズの存在によりケイ素欠乏を補っていることが示唆された。しかし、導管液に含まれるオルトケイ酸が全て根から吸収したものなのかといった検証の確実性に疑問が残る点が多い他、作物の違いによる考察、可給化メカニズムの検証が無いなど、不明瞭な点が散見された。ミミズの活動によりケイ素の可給化がどのように起こっているのか、とても関心がある。今後、ケイ素に対するミミズの可給化メカニズムの詳細な解明が期待される。

2017-12-6
第19回 多賀洋輝
論文タイトル:
Wood decay rates of 13 temperate tree species in relation to wood properties, enzyme activities and organismic diversities
Tiemo Kahi et al. (2017)
Forest Ecology and Management


2017-11-22
第18回 竹原巧
論文タイトル:
Parameterisation and validation of a resource budget model for masting using spatiotemporal flowering data of individual trees
Abe et al. (2016)
Ecology letters
本論文では個体群レベルでのブナの開花動態を数理モデルを用いて再現している。開花動態を説明する数理モデルは個体の資源収支を用いたものが多く研究されているが、本研究は炭素と窒素のうちどちらの資源収支が開花動態に重要であるかをモデルで説明した初の研究である。複数のシナリオで開花動態のシミュレーションを行っており、花粉カップリング効果、気候効果のどちらか一方だけでは開花動態を再現できないことを示した点が大変興味深い。またモデルの再現度の評価のための二つの指標はブナの開花動態の二つの特徴を直接に反映しており、結果が明示的で理論生態学に精通していなくても分かりやすいものとなっている。今後は他樹種でのモデル検証や、遺伝学、分子生物学の知見を組み合わせた学際的な開花動態研究の発展が期待される。

2017-11-08
第17回 甘田岳
論文タイトル:
Global climatic drivers of leaf size
Wright et al. (2017)
Science
「葉の大きさ」という非常にシンプルな形質の全球レベルでの分布パターンを、熱収支の観点で統一的な説明を試みた論文。大きい葉をもつ種は湿潤で暑く日射の強い環境で卓越し、小さい葉をもつ種は乾燥下で暑く日射の強い環境や、高緯度や高標高域で顕著であった。また、過熱回避と凍結回避の両方を考慮した葉熱収支モデルにより、境界層抵抗による葉-空気温度差が、葉サイズの地理的分布を理解得る上で重要であることを示した。
メタ解析ならではのサンプル数の多さもさることながら、熱収支の概念をうまく導入することで、一般的に解釈しにくい「葉の大きさ」を統一的に説明できておりすばらしい。過熱回避と凍結回避という2つの視点から組み立てたモデルも新しく、また非常にきれいなパターンを示すことに成功している。全球レベルでの様々な植物種に当てはめるために、いくつかの興味深い近似でモデルをシンプルにしており、学べることも多い。基礎的な理論から生物の形質を統一的に理解しようとする姿勢は大いに見習いたいと思う。

2017-10-25
第16回 矢納早紀子
論文タイトル:
Elevation, Not Deforestation, Promotes Genetic Differentiation in a Pioneer Tropical Tree.
Castilla et al. (2016)
PLOS one
パナマのパイオニア種であるノボタン科の低木Miconia affinisの遺伝的多様性に、個体群間の標高差、距離、森林消失といった環境要因が与える影響を明らかにした論文。標高差と距離が個体群間の遺伝的分化を促進する一方で、森林消失による影響は見られなった。このことから、M. affinisは荒廃地においても個体群間の交流を保ち、個体群内の遺伝的多様性を維持することができる、森林再生の初期段階に適した樹種であることが示唆された。また、熱帯林の遺伝的多様性を保全するためには、地理的効果による隔離を考慮する必要があるということも示唆された。
過去のイベントの集積とも言える遺伝子型を現在の森林被覆で説明していることや、サンプリングした個体群の分布の偏りが結果に影響している可能性があることなどに問題はあるものの、多様な解析により環境要因が遺伝的交流に与える影響を明らかにし、種の遺伝的交流メカニズムをとらえたうえで森林再生の方法を提言している点において、この研究は非常に意味のあるものである。

2017-10-18
第15回 小林慧人
論文タイトル:
Optimizing selective cutting strategies for maximum carbon stocks and yield of Moso bamboo forest using BIOME-BGC model
Mao et al (2017)
Journal of Environmental Management
本研究では、竹林管理における最適な択伐手法がモデルのシミュレーションにより検討された。竹林生態系の炭素循環をプロセスにしたがって表現できる、プロセスベースモデルの1種であるBIOME-BGCが用いられ、生態系内の炭素プール・フラックス量・収量が指標とされた。竹特有の生態特性(フェノロジー・リターフォール・各器官への炭素配分)が考慮されたモデルを動かした結果、フィールドでの伐採実験の結果と比較することで、モデルの妥当性が実証された。さらに最適な択伐の手法(冬、2年ごと、齢ごとに最適な伐採率)も検討された。本研究で得られた知見は、これまでの経験的な伐採手法を科学的に裏付けたという点でわかりやすい。しかし、モデルの構造や計算の過程や計算結果が明瞭に示されていないなど、不透明さが多く残った点で、納得のできるものではないという声が多かったように思う。

2017-7-26
第14回 松尾智成
論文タイトル:
Tree Size Inequality Reduces Forest Productivity: An Analysis Combining Inventory Data for Ten European Species and a Light Competition Model.
Bourdier et al (2016)
PLOS ONE
本研究では、樹木サイズの不均質性が林分生産性を低下させているのではないかと仮説を立て、それを調べるためにフランスのNGA(National Geographic Agency)のプロットデータとSamsara2の光と成長量の関係を表すモデルシミュレーションを用いている。結果として、樹木サイズの不均質性は10種のうち7種で林分生産性に負の影響を与えているという結果が得られ、残りの3種でも負の影響を与えているという傾向は見られた。このように実測ではなく、プロットデータとモデルシミュレーションから光獲得競争の林分生産性への影響を求めていてとてもスマートだった。また、この研究では耐陰性の影響についても調べていたが、結果として影響を与えていないというものであった。しかし、本当に影響がないと言えるのかということに関しては疑問に思うと同時にとても興味深いものであった。

2017-7-19
第13回 北村麻夏
論文タイトル:
Are potential natural vegetation maps a meaningful alternative to neutral landscape models?
Ricotta et al.(2002)
Applied Vegetation Science
中立景観モデルの問題点を克服するモデルとして、潜在自然植生に基づく景観モデルの提案を試みた研究。中立景観モデルは景観構造の生態系プロセスへの影響を評価するためのモデルであるが、植生動態や植生分布における非生物的な制約が考慮されていないという問題点がある。一方、潜在自然植生は、一切の人間の干渉を停止したと仮定したとき現状の立地気候が支持し得る植生という概念であるが、この植生概念は空間的に系統立てられていて植生動態の影響が考慮されている。そのため、提案する景観モデルは、現存植生を比較・評価するのに適していると考えられる。
また、この論文では潜在自然植生に関連した3つの植生概念(潜在土地改造植生、復元自然植生、潜在代替植生)が紹介されており、これらの概念と比較することで潜在自然植生について考察されている点が興味深い。

2017-7-12
第12回 大平渓子
論文タイトル:
Negative density dependence is stronger in resource-rich environments and diversifies communities when stronger for common but to rare species
Lamanna et al.(2016)
Ecology Letters
同種の密度が高まるほど子孫を残しにくくなる現象を同種の負の密度効果(Conspecific negative density dependence (以下CNDD))という。本研究では@土壌資源可給性がCNDDに与える影響、ACNDDの種間差、BCNDDの成長段階における変化、CCNDDが多様性に与える影響を解析した。結果、土壌資源可給性が高いほどCNDDは強まり、また普通種により強いCNDDがかかる場合に多様性が増大することが明らかになった。各種特性によりもたらされる多種共存メカニズムとして時空間的なニッチの分割とCNDDが挙げられているが、後者は主に種特異的な病原菌の繁殖などによってもたらされると考えられている。この論文を読んで他の栄養段階の生物と絡めて森林を考えることの重要性に気づかされた。単なるCNDDのケーススタディにとどまらず、CNDDが森林群集の形成に与える影響とそのメカニズムまで総括的に考察した点が大きく評価される。また、結果はシンプルであるがこれを導いた解析は大変スマートで参考になった。

2017-7-5
第11回 園田隼人
論文タイトル:
Recovery of biomass and merchantable timber volumes twenty years after conventional and reduced-impact logging in Amazonian Brazil
Vidal et al. 2016
Forest Ecology and Management


2017-6-28
第10回 竹原巧
論文タイトル:
Spatial and temporal dynamics of hotspots of enzyme activity in soil as a affected by living and dead roots - a soil zymography analysis
Spohn & Kuzyakov 2014
Plant and Soil
土壌中において有機物を無機化する酵素の分布が根にどのような影響を受けるかをsoil zymographyという方法で明らかにした研究。根が生きている状態から枯れるまでの期間でセルラーゼ、N-アセチルグルコサミニダーゼ、ホスファターゼの活性分布の変化を追い、根の死後10日目で根の周りの酵素活性が増大していることを示した。本研究の新規性はsoil zymographyによる酵素分布の視覚化であり、これにより従来の研究と比べて解像度の高い酵素の分布を非破壊的に調べることを可能にした。また、分解基質が高濃度で存在する領域における微生物同士のシナジー効果について仮説立てた点も今後検証されるべき重要なテーマだと思われる。これからも土壌における酵素の分布に関連する研究はsoil zymographyを用いて発展していくだろう。

2017-6-21
第9回 小林慧人
論文タイトル:
Extended flowering interval of bamboos evolved by discrete multiplication
Veller et al. 2015
Ecology Letters
本研究では、タケ類特有の規則的でかつ長周期の進化メカニズムが数理モデルによって鮮やかに解かれている。モデルは2段階にわけられ、(1)一年生のタケ個体群が多年で同調する個体群へと進化するプロセス、(2) その個体群が小さな素数倍を繰り返し長い周期を獲得するプロセス、である。モデルを組み立てる上で用いられた考え方は、マスティングの究極要因として受け入れられている捕食者飽和仮説(Janzen 1976)である。モデルの妥当性検証は、系統と周期年数の報告が揃っている2属(それぞれ3種)が対象に行われた。
モデルの前提条件が果たして現実的であるのかという疑問をもったが、いずれにせよ著者らの提案するタケ類特有の進化モデルはシンプルで魅力的であった。今後、遺伝的基盤の解明に向けた研究が盛んに行われるのではないだろうか。

2017-6-14
第8回 矢納早紀子
論文タイトル:
Scale dependence of canopy trait distributions along a tropical forest elevation gradient
Asner et al. 2017
New Phytologist
標高に沿った樹冠化学特性の分布のスケール依存性について明らかにした研究。アマゾンの低地からアンデスの高地にかけて、標高に沿った樹冠化学特性の分布が、手法の違い(フィールドデータと航空画像データ、重みづけの有無)や評価スケールの違い(プロットレベル(1ha)と景観レベル(1000ha))、また粒度の違いによってどのように変化するのかを調べた。景観レベルでの航空画像データにおいて、標高の上昇に伴って、樹冠のLMA、窒素、リグニン、フェノールなどのプロット代表性が減少することが明らかになった。これは標高の上昇に伴って、樹冠の化学特性が種レベルで多様化する可能性、およびその分布が一様でなくなる可能性を示唆している。標高に沿った樹冠化学特性の分布のスケール依存性を初めて定量的に示したという点において、この研究には価値があると言える。

2017-6-7
第7回 向井真那
論文タイトル:
Elevated Air Humidity Changes Soil Bacterial Community Structure in the Silver Birch Stand
Truu et al. 2017
Frontiers in Microbiology
Free Air Humidity Manipulation Facility (FAHM)を用いて人工的に湿度を上昇させ、Silver birch林の土壌細菌群集構造の変化や根の形態学的特徴の変化を調べた研究である。特に温室効果ガスであるN2O生産・還元に関わる酵素の遺伝子に着目している。2年間の湿度上昇処理により、土壌細菌群集構造や脱窒に関わる細菌群集構造は変化し、その応答の様子は根圏土壌と非根圏土壌で異なっていた。また、湿度上昇により、脱窒ポテンシャルが低下することが明らかになった。また、土壌細菌群集構造の変化の様子は根の直径やSRLと関係することが示されたが、これには根の栄養獲得としての役割が強く関係しているものと考えられる。考察では細菌ごとの特徴や役割などにも言及しており、興味深かった。また統計解析や微生物群集構造を決める分類が非常に難しく、理解しきれない部分もあったが非常に勉強になった。湿度上昇の湿度上昇の影響が植物の成長にどのように影響を与えるのか、といった地上部の植物側への影響にも興味がある。

2017-5-31
第6回 甘田岳
論文タイトル:
Cloud forest trees with higher foliar water uptake capacity and anisohydric behavior are more vulnerable to drought and climate change
Eller et al. 2016
New Phytologist
本論文は、ブラジルの熱帯山地雲霧林を構成する3樹種に注目し、吸水能・気孔特性・水ポテンシャルを定量することで樹種間の膨圧維持(乾燥耐性)戦略を評価している。特に雲霧林に特異的な種(Drimys brasiliensis)では、Anisohydricな特性により乾季でも生産を維持するためにゆるい気孔制御とする一方で、その水分損失を補う高い吸水能によって原形質分離を回避する、という戦略を持つことを明らかにした。さらに、その結果を用いてシミュレーションを行い、気候変動による霧発生減少は、高い吸水能に依存した雲霧林構成種に大きな影響をもたらすことを示した。
本論文では、解剖学や生理生態学といった多様な手法や知見を用いた実測により多角的に水分生理を評価し、さらにシミュレーションによる気候変動の影響予測までも行っており、充実した内容となっている。また、近年の水ポテンシャルを用いた指標を多く取り入れており、学ぶ点は多い。ただし、モデルからFog effectを求める方法は適切でない可能性がある。今後は、本研究の示した戦略パターンへの順応の影響評価、また他の様々な気候の森林構成種における評価によって、気候変動と森林の種多様性の応答予測がより詳細になることが期待される。

2017-5-24
第5回 中野正隆
論文タイトル:
Siderophore-based microbial adaptations to iron scarcity across the eastern Pacific Ocean
Boiteau et al. 2016
PNAS
近年鉄欠乏環境下での微生物の鉄獲得機構としてシデロフォアの研究が注目されている。本研究では太平洋東南部における栄養塩、鉄、一次生産の異なる3つの海域においてシデロフォアの定性分析、定量分析を独自の手法を用いて行い、海域間でシデロフォアの化学構成を比較している。今回HNLC(High Nutrient Low Chlorophyll)海域で特定のシデロフォアが多く存在し、鉄をより効率的に獲得できる機構が示唆された。
また、シデロフォア合成酵素を生み出す遺伝子のドメインを調査したところ、同じ海域で遺伝子の水平伝播が発生しており、微生物の鉄欠乏環境への適応メカニズムであると考えられる。
とある元素の欠乏環境下に適応する過程で生物群集が変化することは興味深く、我々の研究対象地である森林生態系においても水系の研究を応用できないか考えさせられる。今後の海洋鉄循環の研究において、シデロフォアが鉄循環に与える影響を詳細に解明することが期待される。

2017-5-17
第4回 吉田雅理
論文タイトル:
Spatial complementarity in tree crowns explains overyielding in species mixtures
Williams et al. 2017
Nature Ecology and Evolution
この研究では、樹冠構造の空間的な相補性を、樹冠体積ベースでの隣接個体間で樹冠が重ならない領域の割合により評価し、そうした樹冠の相補性が、種構成によりどのように変化し、個体成長にどのような影響を及ぼしているのかについて、種多様性を人為的に操作した実験プロットにおける樹冠測定に基づいて考察している。この研究の結果から、種多様性の高いプロットでは、樹冠構造の空間的相補性が高い傾向にあり、個体成長と正の相関があることが示された。また、個体レベルでの詳細な樹冠プロファイルを、自然環境に成立する森林で行うことは困難であることから、実験的フィールドにおいて、個体ごとの樹冠構造と競争関係を詳細に評価している点で、本研究は価値があると考えられる。

2017-5-10
第3回 多賀洋輝
論文タイトル:
A global analysis of parenchyma tissue fractions in secondary xylem of seed plant.
Morris et al.2016
New Phytologist
環境傾度と樹種系統に着目して、木部柔組織の量についての全世界スケールのメタ解析を試みた研究。解剖学的な先行研究から、柔細胞は@水輸送&貯蔵 A養分輸送&貯蔵 B物理的強度 C化学的防御などの木部特性に関連していることが明らかになっている。しかし、柔細胞の量や形質と環境傾度を合わせた解剖生態学的な考察はほとんどされてこなかった。
本研究では、柔組織量が系統によって異なること(裸子植物<被子植物<蔓性植物<多肉植物)と、柔組織量が年平均気温と正の相関、年平均降水量と負の相関を示すことが明らかになった。前述したように、柔組織は樹木が環境に適応する上で重要な機能を担っているため、本研究が示した柔細胞のバリエーションは、樹木の分布や進化を考える上で大きな意味を持つと考えられる。今後は、柔組織の量だけでなく、3次元的構造や他組織との関連に着目した発展が期待される。

2017-4-26
第2回 横山大稀
論文タイトル:
Tracing the Sources of Atmospheric Phosphorus Deposition to a Tropical Rain Forest in Panama Using Stable Oxygen Isotopes
Gross et al. 2016
Environmental Science and Technology
エアロゾルの沈着は生態系の栄養供給源となっていることがこれまで議論されてきた(Chadwick et al. 1999など)。この論文では、パナマの季節性熱帯林において、エアロゾルのリン(P)の濃度や供給源の季節変動を示し、森林生態系へのエアロゾルのP加入量を推定した。最新手法であるリン酸-酸素同位体比(δ18OP)分析を導入することで、パナマでは雨季にサハラ砂漠由来のエアロゾルPが卓越することを示した。さらに衛星画像データと現地観測データを駆使して、パナマへのエアロゾルP沈着量を推定した。その値(88 ± 31 g ha-1 month-1)はパナマの月間リターP加入量の9.6 - 28.5 %を占めていた。
この研究では、衛星画像データをもとにパナマではなくカリブ海でのエアロゾルの沈着量を推定している。また南北方向のエアロゾル移動を無視してエアロゾルの沈着量を推定している。このような手法的な問題から、今回推定されたエアロゾル沈着量は実際の値から解離しているかもしれない。さらに正確なエアロゾル沈着量推定が求められると思う。だが、エアロゾルP加入がリターP加入量の最大28.5%を占める試算はとても大きな値であり、熱帯林のP循環におけるエアロゾルP加入の重要性を数値として提示したインパクトは大きい。

2017-4-19
第1回 辻井悠希
論文タイトル:
Seedling growth responses to phosphorus reflect adult distribution patterns of tropical trees
Zalamea et al. 2016
New Phytologist
異なる土壌リン環境に生息する15種のパイオニア樹種を共通圃場で栽培した研究。この研究では、リン施肥区とコントロール区を比較することで、潜在的な生育環境が異なる種間でリン可給性の変化への応答の違いを考察している。パイオニア樹種に絞っているため、実際の熱帯林の優占種には適用できるのかは明らかではないが、土壌リン欠乏への樹木の応答を遺伝的要因(適応)と環境要因(順化)に分けて評価している点は先駆的である。また、系統によって土壌リン傾度に沿った分布の分散パターンが異なるという仮説は興味深い。Condit et al.(2013)からの一連の研究(パナマの樹木種の分布パターンが土壌・気候傾度とどのようにリンクしているか)は、土壌リン傾度の沿った熱帯樹木の分布パターンを考える上で重要である。