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生態系生態学ゼミとは

このゼミは、発表担当者が興味を持った生態系生態学に関する最新で重要な論文を紹介するものです。

2025年度生態系生態学ゼミスケジュール

2025-12-24
第23回 水上 知佳
論文タイトル:
The increased environmental niche of dual-mycorrhizal woody species
Rog et al. 2025
Ecology Letters Ecology Letters 28, no. 5: e70132.
DOI: https://doi.org/10.1111/ele.70132

EM菌とAM菌の両方と共生する二重菌根性の樹種とどちらか片方としか共生しない樹種の分布域の広さと環境ニッチ幅を比較した論文です。二重菌根性が樹木にどんなメリットをもたらすのかに関心があったので選びました。


2025-12-17
第22回 舟川 馨
論文タイトル:
Spatiotemporal patterns of methane fluxes across alpine permafrost region on the Tibetan Plateau
Huang et al. 2025
Nature Communications 16, no. 1: 7474.
DOI: https://doi.org/10.1038/s41467-025-62699-6

概要
永久凍土の融解によるメタンの発生は地球温暖化を加速化させる恐れがある。 本研究では1989年からの実測値データを元に2100年までのメタン放出/吸収量を複数のシナリオのもとで評価した。 低排出シナリオにおいては当該地域では持続的にメタンは放出に傾くが、高排出シナリオでは当該地域はメタン放出源となるものの、空気中のメタン濃度の増加によって世紀末にはメタン吸収源へと回帰することが予測された。

選定理由
森林以外のメタン吸収/放出も気候変動という大局的な現象の中では重要であるから。


2025-12-10
第21回 Wang Xin
論文タイトル:
Functional traits and ecological niches as correlates of the interspecific growth-mortality trade-off among seedlings of 14 tropical tree species
Zhang et al. 2025
Functional Ecology 38, no. 9: 1888-901.
DOI: https://doi.org/10.1111/1365-2435.14624

概要
著者らは、中国西南部の20haの熱帯林プロットで、14種の優占樹種の苗木を調べました。苗木の成長率と死亡率を長期的に追跡し、種間の growth-mortality トレードオフがあるかどうかを検証したところ、このトレードオフ自体ははっきり確認されました。ただし、その違いは葉や根の15個の機能形質とはほとんど関係せず、比茎長 (SSL)や葉へのバイオマス配分 (LMF)といったバイオマス配分型の形質と強く結びついていました。また、生態的ニッチの解析では、光ニッチはほとんど説明力がなく、土壌ニッチの方がこのトレードオフをよく説明していました

選定理由
この論文を選んだ理由は、成長と生存のトレードオフというと、普通は葉や根の経済スペクトルを思い浮かべますが、この研究ではそれらがあまり効かず、代わりにバイオマス配分形質が重要だった点がとても面白いからです。また、光より土壌環境の方がトレードオフに効いていたという結果も新鮮で、既存のイメージと違っていて印象的でした。さらに、論文全体が簡潔で読みやすいのもおすすめポイントです。


2025-12-03
第20回 神野 空音
論文タイトル:
Changes in nocturnal insect communities in forest-dominated landscape relevant to artificial light intensity
Hakbong et al. 2021
Journal of Ecology and Environment 45, no. 1: 24.
DOI: https://doi.org/10.1186/s41610-021-00207-9

概要
この論文は、夜間照明が昆虫群集にどのような影響を与えるのかを韓国の都市開発の程度に勾配のあるサイトで調べた論文です。 より開発が進んだ、夜間照明の影響をより強く受ける複数の地点と、夜間照明の影響がほとんどない対照地点間で、昆虫の多様性や体サイズに顕著な違いがみられました。 また、各節足動物種は夜間照明や、その他環境要因に対して、栄養段階、食性ごとに異なる反応を示しました。


2025-11-26
第19回 小嶋 慧
論文タイトル:
Linking fine root lifespan to root chemical and morphological traits?A global analysis
Hou et al. 2024
Proceedings of the National Academy of Sciences 121, no. 16: e2320623121.
DOI: https://doi.org/10.1073/pnas.2320623121

概要
細根の寿命(MRL)がどのような形質で決まるのかを、世界40サイト・79種のデータを用いて解析した研究です。その結果、根の窒素濃度が高い(=代謝回転が速い)ほど寿命は短く、根径が太いほど寿命が長いことが分判明しました。一方で、従来重要と考えられてきた SRL や RTD などの構造形質は寿命と強く関係しませんでした。 また、細根寿命は葉寿命とは世界レベルでは対応せず、根と葉は独立した進化的制約を受けている可能性が示唆されました。さらに、寒冷で湿潤な環境ほど細根寿命が長い傾向がみられました。 分野的にも根寿命の研究事例が蓄積されてきた中でのまとめ的研究であり非常に重要な事例です。

選定理由
根寿命に関する全球規模の知見という、最近発表された根分野の基軸的な研究として重要な一例だと考えたため選定しました。また文量も比較的控えめで読みやすいかと思い選定いたしました。


2025-11-19
第18回 須原 健仁
論文タイトル:
Photosynthetic temperature responses in leaves and canopies: why temperature optima may disagree at different scales
Kumarathunge et al. 2024
Tree Physiology 44, no. 11: tpae135.
DOI: https://doi.org/10.1093/treephys/tpae135

概要
この論文は、全樹体チャンバー実験を用いて、葉スケールと樹冠スケールの光合成温度応答を直接比較し、両者の最適温度(光合成が最大となる温度)の違いを生じさせる要因を検証した研究です。 本研究では、(i)光飽和に達していない葉が樹冠全体の光合成に大きく貢献すること、(ii)光合成の生理特性が樹冠内の光環境に応じて垂直方向に変化すること、(iii)生化学的な温度順応が季節的に起こり、それが樹冠光合成の温度応答に影響すること、という3つの仮説を検証するため、樹冠スケールの光合成実測データと葉レベルの測定データと樹冠の葉面積情報をもとに構築した3種類の放射吸収・光合成モデルを比較しています。結果として、光飽和に達していない葉の存在が、樹冠スケールの光合成最適温度を葉スケールよりも6?8℃低下させる主要因であることが示されました。

選定理由
光合成の温度応答を扱っている研究で、個葉レベルの解析を行っている研究は多くありますが、樹冠レベルでモデルと実測値を比較検討している論文は読んだことがなかったので非常に興味を持ったため選びました。手法がやや煩雑かつ難解ではあるものの、実測vsモデルの比較で仮説を検証していく流れは比較的読みやすいと思います。


2025-11-12
第17回 平田 萌根
論文タイトル:
Foliar nutrient resorption stoichiometry and microbial phosphatase catalytic efficiency together alleviate the relative phosphorus limitation in forest ecosystems
Peng et al. 2023
New Phytologist 238, no. 3: 1033-44.
DOI: https://doi.org/10.1111/nph.18797

概要
本研究では、中国の冷温帯林から熱帯林にわたる4つの地点で、リンおよび窒素の樹木の再吸収率、落葉および土壌酸性ホスファターゼ(AP)の触媒パラメータ(Vmax(s)およびKm(m))および土壌の物理化学的性質を測定した。その結果、植物に対する相対的なリン制限は、熱帯林では温帯林よりも概して高いものの、種間および地域内で大きく異なることがわかった。さらに、リン制限環境下では窒素よりもリンの再吸収率が高くなり、リターおよび土壌特異的なリンの触媒効率Vmax(s) / Km(m) が急速に上昇し、有機態リンの無機化が促進された。これらの研究結果は、生態系がリン制限下でリン供給と窒素:リンの化学量論的バランスを維持するために、地上部と地下部の連携戦略を発達させていることを示唆している。

選定理由
樹木の内部の循環 (栄養塩再吸収)と外部からの獲得 (フォスファターゼによる有機態リンの無機化)の2つの経路の寄与をそれぞれ調べている点が面白かった。また、ストイキオメトリーの観点から窒素とリンのバランスに着目している点も勉強になったため。


2025-11-5
第16回 後川 耕太郎
論文タイトル:
Structural diversity as a reliable and novel predictor for ecosystem productivity
LaRue et al. 2023
Frontiers in Ecology and the Environment 21, no. 1: 33-39.
DOI: https://doi.org/10.1002/fee.2586

概要
多様性と生態系機能の関係を調べた研究は多く存在し、その中では多様性を表す指標として種多様性が広く使われている。しかし、物理的構造の多様性も生態系機能と密接な関係があると考えられる。本研究では北米大陸での300万本を超える毎木調査データを使い、森林の構造多様性が生産性をどれほど説明できるかを評価した。その結果、北米大陸の気候条件全体にわたって構造多様性は種多様性よりも生産性を説明した。さらに構造的多様性は空間的な実現ニッチを表すものであると思われる。構造多様性は生態系生産性や炭素隔離を大きくするための森林管理の方針を提供する。

選定理由
自分が卒業論文で使っているRの iNEXT というパッケージをほかの研究者がどのような使い方をしているのかを知りたかった。 また、構造多様性が高いことは光の垂直方向の効率的な利用と関係していると考えることができ、種多様性よりも直接的に生産性と関係するだろうと予想できるため、それを実証している研究が面白そうだと思ったから。


2025-10-22
第15回 大同 唯和
論文タイトル:
Common drivers shaping niche distribution and climate change responses of one hundred tree species
Xu et al. 2024
Journal of Environmental Management 370: 123074.
DOI: https://doi.org/10.1016/j.jenvman.2024.123074

概要
この研究では、中国において経済的・生態学的に重要な100種の樹木を対象に、モデリング手法を用いてそれぞれの生息適地を解析し、主要な気候要因を特定した。さらに、気候変動下における生息分布の将来予測と、群集レベルでの種多様性の変化を明らかにした。解析の結果、「大陸性(気温の年較差)」と「季節的な降水パターン」が多くの樹種に共通して重要な要因であることが分かった。将来予測では、約3割の種が分布を拡大し、4割近くの種が縮小すると推定された。特に、ホットスポットでは、種構成の大きな変化が予測され、森林生態系への影響が懸念される結果となった。これらは、気候変動に対応した効果的な森林管理と保全の方向性を示唆するものである。

紹介理由
100種にわたる種ごとの分析から、群集レベルの解析までひとつの研究で行っている点が面白いと思ったため。また、将来予測まで行う過程のモデリング手法や得られた結果など、自身の研究の参考になりそうな部分があると思ったから。


2025-10-15
第14回 二村 瞭太
論文タイトル:
Large and thin leaves are compromised more by chewers
Zhu et al. 2024
Ecosphere 15, no. 1: e4748.
DOI: https://doi.org/10.1002/ecs2.4748

概要
葉の防御コストと食害抵抗性を表す機能的形質は、局所的なスケールにおける食害の強度を説明する。しかし、葉の形質が大規模なスケールで食害を説明するかどうかは、さらなる解明が必要である。そこで、防御的または栄養分の少ない葉は、より広域的に食害の影響を受けにくいと仮説を立てた。葉の食害データベースとTRY植物形質データベースを結び付けて、9カ国45地点に分布する65科190種を比較した。結果として、食害強度を全体的に決定した要素は葉内の栄養分でなく、葉の構築コストであった。しかし、葉面積の全体損失率としては高くなく、今後の研究において葉の機能的形質と誘発された防御反応との関連性を解明することが重要であると示している。

紹介理由
葉の被食圧と機能的形質の関係は環境や植食者の違いから局所的な比較が多いが、本論文では複数のデータベースを使用して大規模なスケールで比較していることが興味深いと感じたから。


2025-10-8
第13回 福岡 大空
論文タイトル:
Growth of male and female Araucaria araucana trees respond differently to regional mast events, creating sex-specific patterns in their tree-ring chronologies
Hadad et al. 2021
Ecological Indicators 122: 107245.
DOI: https://doi.org/10.1016/j.ecolind.2020.107245

選んだ理由
雌雄によって、大量結実年に対する成長抑制のパターンが異なることを示している。対象としているスギも雄花と雌花をつけ、系統ごとに雄花と雌花をつける割合に差があり、そのことが系統間の成長パターンの差に与える影響について考える上で参考になりそうだと思ったため。


2025-7-23
第12回 舟川 馨
論文タイトル:
Amazon methane budget derived from multi-year airborne observations highlights regional variations in emissions
Basso et al. 2021
Communications Earth & Environment 2, no. 1: 246.
DOI: https://doi.org/10.1038/s43247-021-00314-4

本論文は、アマゾンにおけるメタンの放出に関するものです。複数年にわたって4地点で対流圏下部において収集したサンプルを用いて、アマゾン全域でのメタン放出を推定しています。この推定からアマゾン全域では46.2±10.3 Tg/yearのメタンが放出されており、この量は全球での放出の8%に相当するとされています。 私の研究では熱帯林での土壌におけるメタン吸収・放出を実地観測にて明らかにしますが、本論文では航空機を用いたデータ収集という、別の手法で広域を推定しており、その点に面白みを感じましたので、紹介させていただきます。


2025-7-16
第11回 南 律子
論文タイトル:
The global spectrum of tree crown architecture
Jucker et al. 2025
Nature Communications 16, no. 1: 4876.
DOI: https://doi.org/10.1038/s41467-025-60262-x

この論文は世界中の樹木の樹冠構造の多様性を、環境・系統・機能の視点から解析したグローバルスケールの研究です。 樹冠構造を全球規模で比較した例はほとんどなく、環境適応と進化の両面から樹形の違いを説明しようとする点で、樹木の形に対する統合的な理解が得られる重要な成果だと思い、共有したいと考えました。


2025-7-9
第10回 神野 空音
論文タイトル:
Salinity-induced limits to mangrove canopy height
Perri et al. 2023
Global Ecology and Biogeography 32, no. 9: 1561-74.
DOI: https://doi.org/10.1111/geb.13720

概要
本研究は、塩分濃度がマングローブの樹高に与える影響を調べたものです。マングローブ林の樹冠高は、それらの森林がもつ気候変動へのレジリエンスを評価するために重要な指標であるとされています。本研究では、マングローブの最大樹冠高、種の多様性、平均気温、海水塩分濃度の全球データを用いて、各要因がマングローブ樹木の高さにどう影響するか調べています。

紹介理由
全球的なマングローブの分布やその規模、種組成などに着目しており、勉強になると感じたため。


2025-7-2
第10回 二村 瞭太
論文タイトル:
Leaf phosphorus fractions vary with leaf economic traits among 35 Australian woody species
Tsujii et al. 2024
New Phytologist 241, no. 5: 1985-97.
DOI: https://doi.org/10.1111/nph.19513

概要
本研究は、リン欠乏に対する植物の葉の適応が、植物の生態戦略とどのように関連しているかを明らかにする為に、リン肥沃度の異なる3地点における35種のオーストラリア産木本について、葉の経済的形質とともに5つのリン画分を測定し、葉の光合成活性や窒素濃度との関係を解析した。

紹介理由
  • 葉のリン画分と土壌のリン濃度の関係から植物の適応を理解するアプローチが、自分の修士研究の内容について考えるに際し、参考になった。
  • 2つの対立的環境(高リン土壌/低リン土壌、人為的攪乱の有無)を比較する構造がわかりやすいと感じた。

2025-6-18
第9回 須原 健仁
論文タイトル:
Centennial-scale atmospheric CO2 rise increased photosynthetic efficiency in a tropical tree species
Zwartsenberg et al. 2025
New Phytologist 246, no. 1: 131-43.
DOI: https://doi.org/10.1111/nph.20358

概要
この論文は、大気中CO?濃度の100年にわたる上昇が、熱帯樹木の光合成効率に与えた影響を、年輪中のグルコースに含まれる重水素同位体(アイソトポマー)という分析手法を用いて明らかにした研究です。通常よく使われる炭素同位体(δ??C)とは異なり、位置特異的な重水素比を調べることで、光合成の代謝経路の変化や水利用効率の向上といった生理的な応答を、過去100年以上にわたって詳細に追跡しています。

紹介理由

  • 年輪中の水素アイソトポマーという先進的かつ珍しい手法を用い、100年スケールでの光合成応答を実証的に示しており、長期的環境変化に対する植物の反応を深く理解できる
  • 大気中CO?濃度の上昇という分かりやすい現象を切り口としており、気候変動と植物生理のつながりを直感的に理解できる
  • 解析方法はやや難解であるものの、結果や議論はシンプルで理解しやすい

2025-6-11
第8回 小嶋 慧
論文タイトル:
Rhizosphere priming effects and trade-offs among root traits, exudation and mycorrhizal symbioses
Wang et al. 2025
Soil Biology and Biochemistry 202: 109690.
DOI: https://doi.org/10.1016/j.soilbio.2024.109690

概要
本研究は、中国由来の草本植物に対してプライミング効果と根の形質がどのような関係性にあるかを定量した研究です。根の形質は葉と異なり形質間のトレードオフに関する知見が蓄積されている途中の段階です。本研究は根の形態・生理的形質のトレードオフに関する知見から、根形質と根の周辺土壌(根圏)の微生物の関係性を明らかにしようとしています。根の形質に関する略語が多く登場しやや読みにくいかもしれませんが、議論の内容自体はシンプルです。

紹介理由

  • 自身の研究とテーマ性が近く、菌根菌、根形質、根圏微生物の活性の強さの関係性という未解明分野の中心を研究しているため
  • 議論の内容がシンプルで読みやすかったため。

2025-6-6
第7回 紺頼 楓
論文タイトル:
Leaf morphological traits as adaptations to multiple climate gradients
Wang et al. 2022
Journal of Ecology 110, no. 6 (2022): 1344-55.
DOI: https://doi.org/10.1111/1365-2745.13873

概要
本研究は、中国全土の92地点・662種の木本植物において、葉の22種の形態形質が気候勾配に沿ってどのように変化するかを解析したものです。 従来、葉の機能形質研究ではLMAなどの定量的特性や生理形質などが主でしたが、本研究では、形状、色、表面構造などの「定性的」な形態形質に着目しています。 複数の多変量解析手法で葉の形態形質と環境の関係性を評価し、葉の形態形質の変動が気候、系統(科)、およびサイトでどの程度説明されるかを明らかにしています。

紹介理由
葉形質(今回は形態形質)と環境、および系統の関係を多面的に捉えるために、複数の多変量解析手法を組み合わせて明らかにしていて、きれいだと思いました。 また、たくさんの形質や気候などの変数があるなかで、それぞれの関係性を見やすい図にまとめている点もよいと思いました。

2025-5-23
第6回 WANG Xin
論文タイトル:
Limited intraspecific variation in drought resistance along a pronounced tropical rainfall gradient
Comita et al. 2024
Proceedings of the National Academy of Sciences 121, no. 23: e2316971121.
DOI: https://doi.org/10.1073/pnas.2316971121

概要
乾燥ストレスへの応答の種内変異を評価するため、本研究では相互移植実験とcommon garden実験を行い、抗乾燥性に関連する機能形質および遺伝的多様性解析を組み合わせて、パナマ地域の降雨勾配に沿った16種の熱帯樹種の抗乾燥性の差異を評価しました。結果は、乾燥が湿潤熱帯林の種組成形成において重要な役割を果たす一方で、その種内変異への影響は非常に限定的であることを示しています。

紹介理由
本研究では湿度勾配に沿った相互移植実験を採用し、乾燥地域において幼苗が明確な局所的優位性を示さないという予想と反する結論が得られました。そのため、この論文の分析手法を学び、自身の研究に何らかのインスピレーションを得たいと考えています。

2025-5-16
第5回 芝 里万杜
論文タイトル:
Latitudinal patterns and drivers of plant lignin and microbial necromass accumulation in forest soils: Disentangling microbial and abiotic controls
Marcellus et al. 2024
New Phytologist 243, no. 5 (2024): 1711-23.
DOI: https://doi.org/10.1111/nph.19962

概要
森林土壌中の植物由来リグニンと微生物ネクロマスとがSOCにどのように寄与しているかを、緯度の異なる5地点で調査し、緯度パターンを明らかにしようとしている。さらに、気候・土壌・微生物の特性がそれぞれに与える影響を評価している。

紹介理由
平田くんの論文紹介のときに、「熱帯では土壌炭素の蓄積に対する微生物の寄与が大きい」という考察を見て、実際に緯度傾度をとった時にどのような傾向がみられるか気になったため。

2025-5-7
第4回 水上知佳
論文タイトル:
Evolutionary history and root trait coordination predict nutrient strategy in tropical legume trees
Marcellus et al. 2024
New Phytologist 243, no. 5 (2024): 1711-23.
DOI: https://doi.org/10.1111/nph.19962
熱帯林に生育するマメ科樹種を対象に窒素固定能力の有無や系統が根形質と栄養獲得戦略にどのように関わっているかを明らかにした論文です。新熱帯での研究からマメ科樹木の酵素活性は高いと言われてきましたが、それは科全体にあてはまることなのか、それとも窒素固定能力の有無が関係しているのかを調べています。栄養獲得における資源投資などの観点からも参考になる論文だと思いました。

2025-4-30
第3回 平田 萌根
論文タイトル:
Mycorrhizal tree impacts on topsoil biogeochemical properties in tropical forests
Barcel? et al. 2022
Journal of Ecology 110, no. 6: 1271-82.
DOI: https://doi.org/10.1111/1365-2745.13868
世界中の熱帯地域で、樹木の菌根菌共生に表層の生物地球化学的な土壌特性が与える影響について調べた研究です。温帯林と熱帯林では、EcMと共生する樹木の優占度と土壌炭素・窒素との関係が対照的になることを明らかにしました。その理由として、温帯と熱帯で土壌有機物の蓄積に関わるメカニズムの違いを考察している点が非常に興味深かったです。

2025-4-23
第2回 辰巳 晋一
論文タイトル:
Enhancing ecosystem productivity and stability with increasing canopy structural complexity in global forests
Liu et al. 2024
Science Advances 10, no. 20: eadl1947.
DOI: https://doi.org/10.1126/sciadv.adl1947
林冠構造の複雑度(Canopy Structural Complexity; CSC)と、森林の総生産量や安定性との関係を全球スケールで調べた論文。GEDI(森林観測用衛星LiDAR)やドローンLiDARのデータを使ってCSCを推定。CSCに影響を与える環境要因や、CSCが生産性や安定性と正の相関を持つことを解明。 「森林の三次元構造」や「多様性−生産性関係」に関する最近の研究動向を知るのにいい論文だと思いました。ちょっと手法が複雑ですが、ぜひ読んで、議論しましょう。

2025-4-16
第1回 青柳 亮太
論文タイトル:
Incomplete recovery of tree community composition and rare species after 120 years of tropical forest succession in Panama
Elsy et al. 2017
Biotropica 56, no. 1: 36-49.
DOI: https://doi.org/10.1111/btp.13275
「生態系の回復orレジリエンス」は現代の生態学の重要なトピックの一つで、近年多くの論文が出版されています。森林の回復はバイオマス・構造・機能・多様性といろんな側面から評価されるべきですが、「生物多様性の回復」はその中でも研究の遅れています。この研究は、熱帯パナマで多様性をふくむ森林特性の長期的な回復について調べた研究で、今後明らかにしていくべき内容に取り組んでいます。 総じてレジリエンスをめぐる研究について知るのにちょうどいい論文かなと思います。また、この発表に合わせて、論文の読み方(の一つの方法)についても紹介したいと思います。皆さんの勉強になれば幸いです。