生態系生態学ゼミとは

このゼミは、発表担当者が興味を持った生態系生態学に関する最新で重要な論文を紹介するものです。       

2018年度生態系生態学ゼミスケジュール

2018-11-14
第18回 北村 麻夏 (M1)
論文タイトル:
Soil microbes regulate forest succession in a subtropical ecosystem in China: evidence from a mesocosm experiment
Huixuan Liao et al.(2018)
中国の亜熱帯生態系において、土壌微生物が森林遷移に及ぼす影響を示した研究である。イジュ(ヒメツバキ属)を対象種に、メソコズム(模擬生態系の一種で、比較的規模の大きいもの)という手法を用いた実験に基づいて、土壌微生物が遷移段階の異なる森林にそれぞれどのような影響を及ぼすのかを調べた。 実験により、土壌微生物が樹木に及ぼす影響は遷移段階毎に異なり、このことは遷移段階毎の根圏微生物群集の違いに起因するという可能性が示唆された。また、中国の亜熱帯地域において、イジュは陽性植物の成長を促すことにより森林遷移を促進するが、中生植物にはあまり影響しないことが明らかとなった。 この論文では、土壌微生物と植物成長の相互作用を、直接的なものと間接的なものとで比較して説明されている。これにより、二次遷移における植物と土壌の相互作用の重要性を示したと見られる。一方、本実験はメソコズム手法を用いたものであり、イジュの森林遷移への本来の影響を知るためには、フィールドでの更なる実験が必要と考えられる。

2018-11-07
第17回 中野 正隆 (M2)
論文タイトル:
Potential application of selected metal resistant phosphate solubilizing bacteria isolated from the gut of earthworm (Metaphire posthuma) in plant growth promotion
Biswas et al. 2018
二次鉱物に吸着したリンや有機態リンからリン酸態リンを生成するリン溶解菌(phosphate solubilizing bacteria)の研究が近年多く行われており、最近ではミミズ腸内からも発見され、ミミズによるリン可給化メカニズムの1つとして注目を集めている。この論文では加えて金属耐性のあるリン溶解菌をミミズ腸内から単離し、金属耐性、リン溶解、植物の発芽成長促進の効果を評価している。今回実験で用いたフクロフトミミズ属のミミズ(Metaphire posthuma)から3つの溶解菌(Bacillus sp. 2種とStaphylococcus sp.1種)が発見された。これらはリン溶解、IAA生成、アンモニウムイオン生成の能力をもち、植物の成長を促進する働きをもつことが判明した。さらに、Cu、Zn存在下でも同様の働きがみられ、金属耐性がある溶解菌であることが明らかとなった。また、Bacillus sp. がStaphylococcus sp.よりもポテンシャルが高いため、本研究は金属汚染土壌でのバイオレメディエーションへの活用において、能力が高いリン溶解菌の選択的利用に必要な情報になりうるとまとめている。  ミミズの糞塊生産によってリンや窒素といった栄養元素が増えることは知られているが、ミミズ腸内で何が起こっているのかは未だはっきりと分かっておらず、その中でミミズ腸内の微生物の新しいポテンシャルを明らかにした本論文はとても興味深い。特に、ミミズ腸内細菌が植物ホルモンであるIAAを生産する能力があることはとても新鮮で、ミミズと植物の新しい相互関係が見られる可能性がある。これまで不明瞭だったミミズ腸内の様子を、日々進歩し続ける分子生物学的な手法で今後明らかになれば、ミミズの生態学的役割解明のヒントとなる可能性があり、とても楽しみである。


2018-10-17
第16回 吉田 雅理 (M2)
論文タイトル:
Linking resource availability and heterogeneity to understorey species diversity through succession in boreal forest of Canada
Kumr et al. 2018



2018-10-10
第15回 多賀 洋樹 (M2)
論文タイトル:
Autophagy machinery controls nitrogen remobilization at the whole‐plant level under both limiting and ample nitrate conditions in Arabidopsis
Guiboileau et al., 2012



2018-10-03
第14回 延澤 真実 (B4)
論文タイトル:
Bushmeat and the fate of trees with seeds dispersed by large primates in a lowland rain forest in western Amazonia
Gabriela Nunez-Iturri and Henry F.Howe
この論文は、ペルー南東の熱帯雨林における狩猟対象の霊長類の個体数減少が、本来それらの霊長類によって種子分散されるはずである植物にどのような影響を及ぼすのか明らかにすることを目的としたものである。本論文では、調査区内の霊長類の密度を狩猟区と保護区で比較し、霊長類密度の違いと植物の生産性の違いにどのような関係があるか検証した。植物にとって種子分散は非常に重要な過程であるため、霊長類が減少しそれが行われないと植物の生産性は下がると予想される。実際、検証の結果、狩猟区では大型・中型霊長類の個体数の減少に伴い、大きな種子をつける果実の生産性が低下していた。しかし、霊長類によって種子分散されるとしている植物をその種子サイズだけで決定している点や、それらの植物の通常の生産性がどの程度であるかに言及していない点など、やや突っ込みどころも多い論文であった。


2018-07-18
第13回 片野 春香 (B4)
論文タイトル:
Linking individual-level functional traits to tree growth in a subtropical forest
Liu et al.
この論文では、樹木の詳細な成長と形質データを利用し、個体レベルの機能的形質値は個体の成長率と強く関連することが示されている。従来個々の形質の表現型背景自体は無視されることが多く問題である。しかしこの研究システム中で個体レベルの形質データを測定することによって得られた情報と予測能力は、表現型と環境の状況を同時に考慮すると強く実現することが示された。また、個体レベルの形質データの代わりに種レベルの平均形質値を使用してSEMを作成することによって、個体レベルのデータを使用することの価値を強調し、個体レベルのデータの集約は重要な情報の損失につながり、可能な限り避けるべきであると述べている最近の研究(e.g. Clark et al. 2011)を支持した。この論文を読み、個体レベルの形質データの潜在値が具現化されないことがないように、個体の存在背景を考慮することが重要だということを学んだ。


2018-07-11
第12回 葉 雲翰 (B4)
論文タイトル:
Ecophysiological responses of two closely related Magnoliaceae genera to seasonal changes in subtropical China
Liu, Hui; Zhu, Liwei; Xu, Qiuyuan; et al.



2018-07-04
第11回 池田 友樹 (B4)
論文タイトル:
Rethinking the value of high wood density
Markku Larjavaara and Helene C. Muller-Landau(2011)
Functional Ecology


2018-06-27
第10回 田中 一成 (M1)
論文タイトル:
How is light interception efficiency related to shoot structure in tall canopy species?
Osada N and Hiura T (2017)
Oecologia


2018-06-20
第9回 竹重 龍一 (M1)
論文タイトル:
Mapping tree species in tropical seasonal semi-deciduous forests with hyperspectral and multispectral data
Ferreira et al.2016
Remote Sensing and Environment
この研究は航空機搭載のハイパースペクトルセンサーを用いてブラジル半落葉熱帯雨林で樹種識別を行い樹木マップを作。対象樹種には保全上重要な8種273個体、パイオニア種から極相林種まで幅広く含んでいる。この論文の特徴としては、従来樹種判別で使われてきた可視域〜近赤外(380〜1200nm)だけではなく、短波赤外(1200〜2500nm)も解析に使われている点が挙げられる。この波長域では窒素・リグニン・セルロースといった色素以外の情報をスペクトルから得ることができ、それにより樹種分類精度が上昇した。また従来使われてきた分類アルゴリズム同士の比較も行われていて、ハイパースペクトルカメラを用いて樹種判別を行おうと思っている研究者にとっては必読ともいえる論文であろう。同時に著者らはWorldView-3という商業用衛星が熱帯地域でも林冠レベルでの樹種判別を行える可能性があることを示している。商業用衛星を用いることで、一般利用を含めたより裾野の広い樹種マップ作成への可能性を示唆しているという点で、単なる研究者だけではなく、現場で森林管理を行っている人にとっても実用上重要な論文であるといえるだろう。

2018-06-13
第8回 横山 大稀 (D3)
論文タイトル:
Convergent evidence for widespread rock nitrogen sources in Earth’s surface environment.
Houlton et al. (2018)
Science
「窒素は岩石に含まれておらず、大気からの加入(窒素固定・沈着)によって生物圏の窒素循環に加入する」ということは物質循環における共通認識となっている。この論文は、岩石(とりわけ堆積岩)に窒素が多く含まれていることを指摘し、岩石風化が多くの窒素を陸上生態系に供給していることを示している。  3つの手法(@Planetary N Balance, AGlobal Geochemical Proxies, BSpatial Computational model)で岩石削剥・風化による陸上生態系への窒素の供給量を推定した。全く異なる手法にも関わらず、上記三つの手法は地球全体の削剥・風化による窒素供給量を同等の値で推定した。また陸上生態系への岩石風化による窒素供給量は全窒素供給量(岩石風化+窒素固定+窒素沈着)に対して大きな割合を占めていた(全球スケールで10%程度)。Bのモデルでは、世界地図の各グリッド点において岩石風化による窒素供給量をフラックスとして推定しており、とりわけ窒素固定速度の低い寒帯地域や削剥作用の大きい山地において岩石風化による窒素供給量が全窒素供給量の中で大きな割合を占めていることが示された(e.g. 寒帯林: 30%, 山地草原: 28%)。
この論文を読んで、窒素循環に関する認識が180度変わりました。今後物質循環の教科書を書き換えるようなパラダイムシフトが起きるのでしょうか。

2018-06-06
第7回 竹原 巧 (D1)
論文タイトル:
Geographic variation in pollen color is associated with temperature stress.
Koski et al. (2018)
New Phytologist
この論文では、花粉色の地理的変異に地域の最高気温の傾度が影響していることを示した。さらに採取した花粉を高温に晒し、発芽率の変化を花粉色ごとに調べている。これによって紫色の花粉が他色の花粉と比べて高温に対する高い耐性を持つことを示した。花粉色と環境傾度の相関を見るだけでなく、実験的に環境ストレスへの耐性の増大を検証している点が結論の根拠を頑強にしており、模範的な実験デザインであると感じた。花粉の紫色の発色にはアントシアン系の色素が関わっていると考えられ、アントシアンの特性は抗酸化性が知られている。アントシアニンの生産量の増大が直接的にどのように高温耐性の獲得に結びつくか明らかにするのが課題に思えた。

2018-05-30
第6回 大平 渓子 (M1)
論文タイトル:
Regional forcing explains local species diversity and turnover on tropical islands.
Thomas et al. (2017)
Grobal Ecology and Biogeography
熱帯インド-太平洋地域の19諸島41島113植生プロットを対象に、プロットスケールでの木本植物の多様性が、地域スケールで働く要因(regional forcing)とどう関係するかを検証した論文。地域で働く要因として、気候(局所気候除く)や島のエリア、大陸からの距離が用いられた。特に後者2つは、島や諸島全体の多様性に影響することが知られていたが(例、MacArthurとWilsonの平衡理論)、本研究では、こうした要因がプロットスケールの木本植物の多様性にも影響する可能性を示した。すなわち、島のエリアと大陸からの距離は島全体の多様性を決定し、この種のプールの大きさが局所スケール(プロット内)の多様性に関係(’Echo pattern’ by Rosenzweig and Ziv 1999)していると考察された。
生物地理学的な視点が多数盛り込まれており、新鮮であった。地質や地形といった、より局所スケールで働く要因と多様性の関係を探っている身としては、大雑把な解析・解釈に思える箇所もあったが、自分の視野が広がったと思う。
2018-05-23
第5回 松尾 智成 (M1)
論文タイトル:
Asymetric competition for light varies across functional groups.
Guo et al. (2017)
Journal of Plant Ecology
この論文では、樹木個体の光獲得量を求めずに成長量と樹高のみから光を巡る非対称競争を定量化している。さらに異なる機能型形質グループが非対称競争に対してどのような応答を示すのかを評価している。結果として林冠木の方が下層木や低木に比べて、落葉広葉樹の方が常緑広葉樹に比べて非対称競争の影響を受けやすいことが明らかになった。この結果から成長の早い種の方が光を巡る非対称競争の影響を受けやすいことが示唆された。また、常緑広葉樹も夏においては光を巡る非対称競争の影響を受けることが分かった。この結果から夏と冬の光環境の変化が常緑広葉樹の成長に影響を与えていることが示唆された。冬の成長量を利用して、常緑広葉樹の冬の光獲得量から冬の光獲得効率や光利用効率を算出することに期待。しかし、著者は種ごとの比較や材密度や潜在樹高などの光を巡る非対称競争の影響を見たいそうなので、まだまだ光獲得量の算出は後回しになりそう。

2018-05-16
第4回 小林 慧人 (D1)
論文タイトル:
Modular, hollow culms of rain-forest bamboos explain their persistence across a wide range of light environment.
Fujinuma et al. (2018)
Journal of tropical ecology
この論文のテーマは、「熱帯雨林内において樹木よりも背丈で劣るタケが、林内の様々な光環境下でどのようにして生きているのか」です。著者らはタケ特有の中空の構造とモジュール構造に着目し、これらの特性をもつことによりタケは生育できているのではないかという新しい仮説を提唱し、半島マレーシアの丘陵フタバガキ林の伐採試験地でこれを検証しています。タケと樹木で地上部の構造を比較することで、中空のタケは樹木と比べて重量あたり1.5倍の高さを獲得していること、また、同じ重量あたり6倍の樹冠面積を獲得していることが示され、タケは投資を抑えて光を獲得できる構造を持っていることが分かりました。また、撹乱後の地上部バイオマスの回転率を調べた結果、タケは草の性質をもつゆえに、ラメットを素早く増やして回転率を上げていました(3倍)。
タケ類の生態の本質を理解する上で、同所的に生育する樹木と比較するという方針がとても良いと思いました。今後の私の研究に参考になる部分が多くありました。本研究を発展させ、地上部の光獲得量や成長量の実測や地下部への投資様式の実測をすることで、「なぜタケは低地熱帯雨林では生育できないのか」や「なぜ温帯タケと異なり熱帯タケは地下茎をあまり伸ばさない戦略を持つのか』といった疑問にも答えられるような研究を起こすことができると感じました。

第3回 (欠番でした)
2018-04-25
第2回 甘田 岳 (D2)
論文タイトル:
The role of biomass allocation between lamina and petioles in a game of light competition in a dense stand of an annual plant.
Yoshinaka et al. (2018)
Annals of Botany
「葉身と葉柄に対してどのようにバイオマス配分をすれば、高密度生育下の草本植物が光獲得や光合成生産を最適化できるのか」についてゲーム理論とYPLANTを用いたシミュレーションによって検証した論文。葉身-葉柄間の最適なバイオマス分配は、近傍個体の有無やその表現型に依存して異なることが示唆された。一方、葉身-葉柄間バイオマス分配における進化的安定戦略(Evolutionary Stable Strategy, ESS)は、最適な分配比率とは異なり、実際生育した植物ではESSな分配比率をもつことが明らかとなった。そうしたESS的分配比率には、生物力学的または資源利用的な制約が影響し得ることも示唆された。一方でESS的バイオマス分配は、断続的に複数みられ、これは異なる構造をもつ種内・種間の植物の共存を可能としている可能性が示唆された。
森林群落においては、その巨大さによる形質測定困難性や長期的な動態の重要性から、ゲーム理論に基づいた光獲得競争の評価を行うことができていない。しかし、本論文でも述べているように、周囲個体の戦略に依存して自身の有利な戦略が変わってくるような光獲得競争において、ゲーム理論は必須である。今後、様々な計測技術の発達により、理論に基づいた、形質と森林動態の関係性の定量化が進むことが望まれる。また、収量一定の法則など、森林生産に関わる多くのモデルと、競争に基づくゲーム理論との、理論的な関係性やモデルの統合も興味深いので、進展を期待したい。

2018-04-18
第1回 向井 真那 (D3)
論文タイトル:
Effects of sorption on biodegradation of low-molecular-weight organic acids in highly-wearthered tropical soils.
Hayakawa et al. (2018)
Geoderma