生態系生態学ゼミとは

このゼミは、発表担当者が興味を持った生態系生態学に関する最新で重要な論文を紹介するものです。

2015年度生態系生態学ゼミで取り扱った論文紹介

2015-12-16
論文タイトル:
The effects of belowground resources on aboveground allometric growth in Bornean tree species
Katherine D. Heineman et al.2011
Forest Ecology and Management

PD 森 大喜

2015-10-28
論文タイトル:
A conifer-angiosperm divergence in the growth vs. shade tolerance trade-off underlies the dynamics of a New Zealand warm-temperate rain forest
Christopher H Lusk et al.2015
Journal of Ecology

M1 岡野 めぐみ

2015-10-21
論文タイトル:
Primary forests are irreplaceable for sustaining tropical biodiversity
Luke Gibson et al., 2011
Nature

B4 矢納 早紀子

2015-10-14
論文タイトル:
Resilience and Alternative Stable States of Tropical Forest Landscapes under Shifting Cultivation Regimes
Marina Hirota et al., 2011
Science

B4 園田 隼人

2015-07-22
論文タイトル:
Climate and litter quality differently modulate the effects of soil fauna on litter decomposition across biomes
Garcia-Palacios et al., 2013
Ecology Letters

B4 竹原 巧

2015-07-08
論文タイトル:
Oxygen Isotopes Unravel the Role of Microorganisms in Phosphate Cycling in Soils
Tamburini et al., 2012
Enviromental Science & Technonlogy

D1 横山 大稀

2015-07-01
論文タイトル:
Oxygen isotopes of phosphate and soil phosphorus cycling across a 6500 year chronosequence under lowland temperate rainforest
Rberts et al., 2015
Geoderm

リンは森林生態系において必須元素であり、土壌生成年代の古い熱帯では特に生産を制限しているといわれている。これまで、土壌中のリン画分の土壌生成年代による変遷は調べられてきたものの、森林生態系における詳細なリン循環は明らかにされてこなかった。これには、リンは安定同位体を持たないために、同位体がトレーサーとして機能しないことが原因であると考えられる。しかし近年、地球上に存在するリン酸は酸素と強く結合していることに着目し、酸素の安定同位体比を計測することで、リンの動態を探る研究が盛んに行われている。本研究では、近年確立されてきた手法を用い、年代の異なる森林土壌を研究対象として土壌のリンの画分を決定し、それぞれの画分の酸素安定同位体比を測定して土壌中のリンの循環を明らかにした。母岩中のリンは年代が経つにつれ次第に利用されるが、長い年代に渡って植物の利用可能なリンが効率的に植物に供給されているのは、植物による吸収と、リターの無機化が迅速におこなれているからであるという可能性を示した。今回利用した手法は、森林生態系でのリン循環に新たな知見を与えることが期待される。今後、調査域を広げ、一般的なリン循環の仕組みが理解できれば、リン律速の森林で、樹木はどのように適応しているのかを明らかにできると考えられる。今後の研究の発展に期待したい。

M2 向井 真那

2015-06-10
論文タイトル:
Complementarity in nutrient foraging strategies of absorptive fine roots and arbuscular mycorrhizal fungi across 14 coexisting subtropical tree species
Liu et al., 2015
New phytol

D3 孫 麗娟

2015-06-03
論文タイトル:
Trees increase their P: N ratio with size
Sardans J, Penuelas J. 2015
Global ecology and biogeography 24:147-156

D1 辻井 悠希

2015-05-27
論文タイトル:
Decoupling of nitrogen and phosphorus in terrestrial plants associated with global changes
Z. Y. Yua and Han Y. H. Chen 2015
nature climate change

M1 源六 孝典

2015-05-20
論文タイトル:
Leaf pubescence as a possibility to increase water use efficiency by promoting condensation
Konrad et al. 2014
Ecohydrology

本論文は「葉毛によって露形成が促進され水利用効率が上昇する」という乾燥地における葉毛の意義の可能性を、物理モデルから検証している。葉毛に露が形成されると葉内外の水蒸気濃度差が減少する一方で、二酸化炭素濃度差には影響しないので水蒸気フラックスが大きく減少して水利用効率が高くなることが示された。乾燥地での葉毛の適応的意義は未解明な場合も多く、この論文によって新たな可能性が提示されたと考えられる。この仮説が実際の環境下で有効か否かを解明する研究が今後展開されることを期待する。また、生物と環境の力学的・生理学的挙動の多くは、厳密に解明することができれば理論上物理的に表現できるはずである。本論文を通して物理モデルの有用性と生物を表現することの難しさを実感していただければ幸いである。

M1 甘田 岳

2015-05-13
論文タイトル:
Low investment in sexual reproduction threatens plants adapted to phosphorus limitation
Y. Fujita et al. 2014
Nature 505 82-86

これまでの研究から、異なる元素によって生産性を制限された環境(窒素制限かリン制限か?)では、異なる生物群集が形成されることが明らかになりつつある。Wassen et al. (2005)は、ヨーロッパの草本生態系では、リン制限環境で絶滅危惧種の数が増加することを示した。なぜリン制限下で絶滅危惧種が増加するのだろうか?この問いに答えるため、本研究では、窒素制限・リン制限が草本植物の形質に与える影響を膨大なデータから調べた。結果として、リン制限環境に適応した種は、種子繁殖への資源の投資が少ないことを明らかにした。そして、繁殖への投資の低下は種の移動分散能力の低下につながるため、リン制限環境に適応した種は、ハビタットが撹乱を受けた際の絶滅リスクが高まっている可能性を示した。
窒素制限・リン制限環境に適応した種の特性として繁殖に着目した研究は少なく、繁殖に対する栄養制限が種の分布に影響していることを示唆した本研究の結果は興味深い。土壌栄養が繁殖を介してさまざまな生物のパターンを決定している可能性を示したという点で面白い研究だと考える。

PD 青柳 亮太

2015-04-22
論文タイトル:
Roots and Associated Fungi Drive Long-Term Carbon Sequestration in Boreal Forest
K. E. Clemmensen et al. 2013
Science 339 1615-1618

本論文では、年代系列に沿った北方林生態系を用いて、土壌炭素蓄積における地下部根系と根に関係する菌類の寄与の大きさとその過程を示しており、地上部のリター供給と分解者の関係から説明されてきたこれまでの土壌炭素蓄積過程の理解に、明確な異議を投げかけている。この論文で私が特に注目した点は二点ある。一つは地上部リターと根リターの供給過程をモデル化し、土壌炭素年代を元に各土壌層の炭素量への各リターの寄与率を算出した結果である(Fig.1)。生態系の年代経過に沿った地下部由来の炭素蓄積の寄与率の上昇を示す、この論文のハイライトとなる結果である。もう一つは、年代に沿った菌類の回転速度や菌糸由来の炭素蓄積量の変化を、生成過程や分解性の異なる菌類バイオマーカー量の傾向から考察している点である(Fig.3上段)。特に結合状態の異なるエルゴステロール量だけでも非常にはっきりした違いが出ていることは興味深く、自身の研究の参考にしたい。今後、本論文で明らかにされた、「根や共生菌に由来する炭素加入が土壌炭素蓄積過程において支配的」なことを、共生菌類の機能的側面から解明する研究の展開に期待したい。

PD 岡田 慶一

2015-04-15
論文タイトル:
Relationships among phosphorus, molybdenum and freeliving nitrogen fixation in tropical rain forests: results from observational and experimental analyses
Reed, Sasha C.Cleveland, Cory C. Townsend, Alan R. 2013
Biogeochemistry

PD 森 大喜